エリートじゃなくても、偉大なエース
日本代表で長年ストライカーを務めてきた岡崎慎司選手は、ドイツ・イングランド・スペインで得点を積み重ねてきました。岡崎選手といえば、スピードと足元の技術が課題と思われがちですが、点を取る技術に関しては日本でトップレベルの選手です。なぜ点を取れるのか、その理由を岡崎選手のプレーから探っていきましょう。
代名詞ともいえるダイビングヘッドのルーツ
岡崎選手は高校時代に兵庫県の強豪・滝川第二高校に進学し、高校選手権にも出場しました。滝川第二時代にはコーチがボレー禁止と岡崎選手のボールに書き、低いボールに対してもヘディングで向かうように推奨しました。また、ボールマウスに立たせて、PKをヘディングでクリアする練習もしていました。これらの練習から、勇敢さとヘディング技術を身につけ泥臭い選手へと成長しました。「技術も大切だが、学ぼうとする姿勢の方が重要」という高校時代の恩師の指導が自らの原点だと岡崎選手は述べています。
下手くそでも諦めない
2005年に滝川第二高校を卒業後、岡崎選手はJ1の清水エスパルスに加入しますが、周りの評価は低く、長谷川健太監督(現・東京FC監督)によると「FW8人の中で8番目の選手」という位置付けでした。それでも岡崎選手は諦めることなく、控え選手によるサテライトリーグ(2009年で終了)で努力を続けました。
プロ3年目の2007年の川崎フロンターレ戦でJ初ゴールを記録すると、翌年から清水エスパルスの主力として活躍することになります。プロ4年目の2008年から清水エスパルスの主力となった岡崎選手は、3年連続2桁得点を記録し、2009年にはJリーグ・ベストイレブン選出と新人賞を獲得します。Jリーグでの活躍がドイツ・ブンデスリーガのVfBシュトゥットガルトの目に留まり、海外リーグへ挑戦することになります。
動画:youtube[【TOP10 GOALS】あの長友佑都との1対1に勝ってのゴールもランクイン!岡崎 慎司Jリーグ時代のゴール編]
不遇の時も諦めない
VfBシュトゥットガルトに移籍したものの、契約問題で出場ができない期間が続いたことや、本職のFWではなくサイドMFで起用されるなど不本意な時期を過ごしました。移籍2年目の2011-2012シーズンはリーグ戦で7得点を記録するも、翌年2012-2013シーズンはリーグ戦1得点に止まりました。
しかし、同じドイツ・ブンデスリーガのマインツ05から150万ユーロ(約2億円)の移籍オファーを提示され完全移籍すると、1年目から香川真司選手がドルトムント在籍時に記録したブンデスリーガの日本人シーズン最多得点記録(13得点)を更新し、ドイツ・ブンデスリーガの2013-14シーズン・ベストイレブンにも選出されました。翌年2014-15シーズンには、奥寺康彦氏が持つブンデスリーガ日本人通算最多得点記録(28得点)を更新します。そして、マインツ05での活躍が認められ、イングランド・プレミアリーグのレスター・シティーに1100万ユーロ(約15億円)で完全移籍することになります。
動画:youtube[岡崎慎司 Shinji Okazaki – Top 5 Goals]
奇跡のプレミアリーグ制覇
岡崎選手がマインツ05から移籍した当時のレスター・シティは、2013-14シーズンにイングランド・2部リーグからプレミアリーグに昇格を果たし、1年目はプレミアリーグ残留がやっとのチームでした。さらに、プレミアリーグ昇格と残留に尽力したピアソン監督が解任されるなど、チームの状況は決して良いとは言えませんでした。
新たにクラウディオ・ラニエリ氏(2021年イタリア・サンプドリア監督)が監督に就任しましたが、目標はプレミアリーグ残留というものでした。2015-16シーズンの前半を2位という好成績で折り返しても、ラニエリ氏はインタビューで「(プレミアリーグの残留目安である)勝ち点40が目標」と繰り返していました。ですが、予想に反して勢いは衰えず、トッテナム・ホットスパーの追撃をかわして奇跡のプレミアリーグ優勝を果たします!
ちなみに、プレミアリーグ優勝時のレスター・シティには、2021年現在マンチェスター・シティで活躍しているリヤド・マフレズ選手やチェルシーに所属するエンゴロ・カンテ選手が在籍していました。レスター・シティが獲得した選手はその後ビッグクラブに移籍することが多く、他にもマンチェスター・ユナイテッドのハリー・マグワイア選手やチェルシーのリカルド・ペレイラ選手もレスター・シティに在籍していた選手です。
岡崎選手はプレミアリーグ通算114試合14得点と、マインツ05在籍時のように得点を量産していたわけではありませんが、豊富な運動量と前線からのプレスなどでチームに貢献しました。ラニエリ氏の後任としてレスター・シティの監督に就任したブレンダン・ロジャーズ氏も、岡崎選手の数字に残らない貢献を絶賛しています。しかし、プレミアリーグ4年目の2018-19シーズンは出場機会が激減し、契約期間の満了ということもあり、スペインリーグ2部のウエスカに移籍します(当初マラガと契約するも、選手登録ができず退団)。
動画:youtube[Shinji Okazaki: Every Premier League Goal]
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ラ・リーガ1部昇格に貢献
スペインリーガにはセレッソ大阪の大久保嘉人選手をはじめとして、中村俊輔選手(横浜FC)や家長昭博選手(川崎フロンターレ)も短期間在籍しましたが、いずれも長くは続きませんでした。中村俊輔選手は以前インタビューでスペインリーグについて聞かれた際に、「(スペインは)日本人選手に最も向かないリーグ。名前も聞いたことないような選手もめちゃくちゃ上手くて強い」と答えていました。また、家長昭博選手も「僕がチームで一番下手だった」と言っています。
中村俊輔選手や家長昭博選手は非常にテクニックのある選手ですが、それでもスペインではその他大勢になってしまうのです。岡崎選手は自らテクニックのある選手ではないと語っており、スペインリーグで活躍できるのか疑問視する声もありました。予想に反し、2019ー2020シーズンの岡崎選手はリーグ戦12得点を記録してチーム得点王とファン・サポーターが選ぶクラブ年間最優秀選手に選出され、スペインリーグ1部昇格に大きく貢献しました。
動画:youtube[Highlights Granada CF vs SD Huesca (3-3)]
まとめ
プレー動画では次のことが分かります。
・ボールがこぼれる位置を想定し、ワンタッチでゴールできる場所にポジショニングを取る
・体勢が崩れるといった難しい状況でも諦めずに、必死にゴールをもぎ取ろうとする
・自ら打ったシュートに、自ら詰めてこぼれ球にも備える
岡崎選手はスピードと足元の技術を、持ち前のがむしゃらさとポジショニングスキルでカバーしてきました。結果的に多くの得点を稼ぎ、チームを勝利に導く存在となりプレミアリーグ優勝も経験することができました。岡崎選手のようにひたむきにゴールを目指しながら、攻撃以外の貢献も怠らないプレーヤーはどんなチームからも必要とされるはずです。
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