ブラウブリッツ秋田、不屈の精神はピッチ上だけじゃない!

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J3王者、20倍の資金を持つJ1王者に挑む

2020年12月27日、天皇杯準決勝の試合が等々力陸上競技場で行われました。
等々力競技場をホームグランドとする川崎フロンターレは、2020年にJ1史上最速優勝や最多勝ち点をあげて連覇を遂げた絶対王者とも呼べる存在です。対するブラウブリッツ秋田もJ3史上最速優勝を達成しJ2昇格を決めていましたが、川崎フロンターレ相手に得点をあげることができず敗退しました。

動画:YouTube『【ハイライト】川崎フロンターレ×ブラウブリッツ秋田 天皇杯 JFA 第100回全日本サッカー選手権大会 準決勝』

天皇杯は一発勝負のトーナメント方式ですので、過去には大学生チームがJリーグのチームに勝ったりするなど、波乱が起きやすい大会でもあります。2020年の天皇杯準決勝は、J1から王者川崎フロンターレと2位ガンバ大阪、J2からはJ1昇格が決定している徳島ヴォルティス、J3からはJ2昇格が決定しているブラウブリッツ秋田と、J1の強豪チームにJ2とJ3のリーグ優勝チームが対戦する格好になりました。

準決勝の対戦カードをクラブの資金力で比較してみると、川崎フロンターレのチーム人件費がおよそ30億円であるのに対して、ブラウブリッツ秋田はおよそ1億5000万円であり、その差は20倍にもなります。同じプロチームとはいえ、J1とJ3のクラブには大きな資金力の差があるのです。

チームだけじゃない。J1とJ3の選手年棒格差

サカレコでは、以前にもJ3の選手の収入やお金事情を記事にしてきました。J3のチームにはプロ契約を締結している選手ばかりではなく、アマチュア契約のため、アルバイトをしながらクラブに所属している選手もいます。

Sportingintelligent社の報告によると、2020年J1選手の平均年棒は約3300万円でした(1ドル=100円換算)。

JLeagueSalaryAverage

図1:Jリーグ経営情報より、編集部作成

図1を見ると、J1選手の平均年棒は過去数年間上昇していることが分かります。あくまで平均年棒ですので、アンドレアス・イニエスタ選手のように年棒が30億円を超える選手もいますし、高卒やユースから加入したばかりの選手は、C契約という最低年棒で契約することがほとんどです。

とはいえ、J1のクラブに所属する選手は550人ほどですので、ほんの一握りのエリートであることはお分かりいただけると思います。J2やJ3のクラブに所属する選手の平均年棒については、残念ながら公表されているデータがありませんが、J2で約400万円ほどだという報告もあります。J3については…関連記事を参照してください。

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J3の選手のリアルなお金事情〜サッカーだけでは食べていけない現実〜

J3優勝チームが昇格できなかった理由とは?

2020年にJ3史上最速優勝を果たしてJ2昇格を決定したブラウブリッツ秋田は、実は2017年にもJ3で優勝しています。ですが、J2クラブライセンス未交付のため、昇格することができませんでした。

J2クラブライセンス交付の条件として、観客を1万人以上収容できるスタジアムが必要なのですが、当時のブラウブリッツ秋田のホームスタジアムの収容人数は5000人ほどでした。ホームスタジアムの改修や新スタジアムの建設のためには多額の資金が必要ですが、J3に昇格して間もないブラウブリッツ秋田は対応することができませんでした。

それだけではなく、JFLに所属していた2013年とJ3に昇格したばかりの2014年には、負債が資産より多い債務超過となっており、J3クラブライセンスすら失う可能性もあったほど、経営状態は悪かったのです。

AkitaBalanceSheet

図2:ブラウブリッツ秋田資産状況 編集部作成

図2を見ると、2013年と2014年は、負債(赤棒グラフ)が資産(青棒グラフ)よりも多くなっていることが分かります。一般家庭で例えると、住宅ローン残高(負債)が持ち家評価額(資産)より多い状態で、持ち家(資産)を売却しても、住宅ローン(負債)だけが残る状態です。

2015年末に、なんとか債務超過を解消したのですが、J2クラブライセンス交付の条件である1万人収容のスタジアムを用意する資金がなかったためにJ3優勝チームながら昇格できない事態となったのです。

J2昇格で経営は安定するか

2020年、ブラウブリッツ秋田はJ3史上最速優勝を成し遂げ、J2昇格と共に、天皇杯準決勝出場と躍進しました。2018年には、ホームスタジアムを八橋運動公園陸上競技場に移しましたので、J2クラブライセンスもクリアしました。ただ、経営状況を調べると、いくつか懸念材料も見つかります。

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図3:ブラウブリッツ秋田の収支状況 編集部作成

図3を見ると、ブラウブリッツ秋田の収入は毎年増えていますが、支出も同じように増えており、本業であるサッカークラブ運営では利益をあげられていないことが分かります

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図4:ブラウブリッツ秋田の収入内訳 編集部作成

また、ブラウブリッツ秋田は収入のほとんどを広告料収入に頼っていることが、図4より分かります。J2昇格で広告料収入は増加すると予想されますが、他の収入源が必要なことに変わりはありません。

 

AkitaBalanceSheet2

図5:ブラウブリッツ秋田の利益状況 編集部作成

図5はブラウブリッツ秋田の利益をグラフにしています。サッカークラブ運営以外の収入があるため利益は出ていますが、2019年度は赤字になっています。J2クラブライセンス交付には、スタジアムの他にも3年連続で赤字になってはいけないという条件もあります。

2020年度はJ2昇格決定と天皇杯準決勝進出という素晴らしい結果を残していますが、コロナの影響でJリーグ全体の収入が減ると予想されていますので、決して油断はできません。

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いくつもの逆境を跳ね除け、J2に辿り着いたブラウブリッツ秋田

2015年には債務超過を解消し、2017年にはJ3優勝にもかかわらずJ2昇格が叶わないなど、ブラウブリッツ秋田はいくつもの逆境を経験してきました。しかし、それらをすべて乗り越え、2020年にJ2昇格を掴み取り、天皇杯準決勝では川崎フロンターレに臆することなく闘う姿を見せてくれました。

これからも多くの困難が待ち受けているでしょうが、ブラウブリッツ秋田は諦めることなく、何度でも立ち上がる勇姿を見せてくれるでしょう!

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