小嶺イズムの継承者、スペインで得た知識と確信4

試合のための練習しかしない

「小嶺先生は試合のための練習しかしない。プレーを切り抜くんですよ。約束事がいっぱいあるんですけど、例えばサイドの選手がゴールライン側まで切り込んだ場合、2つしか選択肢がない。ゴールラインまでドリブルしたら切り返しは禁止。マイナスにゴロで折り返すか、チップキック気味にファーに折り返すかの二択なんです。それは絶対の約束事。

その約束事をひとつ決めておくと、中に入る選手は何も指示を与えなくても自分たちで判断する。元々マイナスにいた選手がファーに行って、違う選手がマイナスに入ってくるとかは自由じゃないですか。こことここにいなきゃいけないという規律の中では自由っていうのがあったんですよ。で、その練習ばかりやるんです。

守備は特にそうです。スペインで言われている、プレーモデルから抽出した練習。守備の練習はほとんどそれですね。CBは相手FWにマンツーマンで、カバー役のリベロが1人いるって感じだったので、パスコースが限定されたらインターセプトしか狙わなくていい。裏を取られてもカバーがいるからいいと。

でも実はこれってマークのコンセプトとしては間違っているんです。基本的に裏を取られちゃダメなんで。でも小嶺先生のプレーモデルの中では正解なんですよね。それで練習を繰り返す。縦に蹴って、FWに入ったところでタイミングよくインターセプトを狙う。裏に抜けたボールはカバーリングっていうのを反復してやらされていたので。それを練習試合でやると、相手もいろんな選手がいるからそこで経験が増えていく。そういう試合に向けての、試合のためのトレーニングに関して小嶺先生はしっかりやっていた。

スペインに来て感じたのは、このチームがどうしたいかはっきり分かる。それがいいサッカーって結構言われるんですよ。監督がやりたいことがしっかり浸透している。守備はここで奪いたいんだ、攻撃はこう攻めたいんだというのがはっきり上から見ていて分かるサッカーが。もちろんサッカーの概念から外れず。そういうところは小嶺先生はすごく近いのかなと。」

――対戦相手を分析して、今日はこう戦うという作戦も?

「あります。システムは3つぐらいのパターンしかない。2トップなのか1トップなのか、4バックなのか3バックなのかくらいしか違いはないんですけど、それがほとんどの相手に通用する。対戦相手によってシステムを変えるとか、戦い方をちょっと変えるっていうのは、小嶺先生はすごく長けていると思います」

――それプラス、どこよりも走り込んでいるという自信もあった

「それはありました。俺らよりきついことやっているチームはないから、負けるはずがない、みたいな感じはありました。国見が強かったのは、そのメンタルがあった上で小嶺先生の戦術があった。国見は走っているから強いみたいなイメージがあるじゃないですか。でも絶対にそれだけじゃない。それで勝てるんだったら陸上部連れてこいよって感じじゃないですか」

スペインでの経験をフィルターにして振り返った恩師の指導法には、共通かつ普遍の概念が少なからずあった。最終回となる次回はこれまでの経験を踏まえ、今後、目指していく理想の指導者像について語ってもらう。

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吉住貴士

吉住貴士(よしずみ たかし)/1986年生まれ。長崎県平戸市出身。国見高―鹿屋体育大卒。長崎総合科学大学附属高サッカー部コーチを5年間務めた後、2013年に渡西。バルセロナの町クラブで育成年代の指導に当たりながらスペイン指導者ライセンスのレベル2(日本のA級に相当)を取得。17年の帰国後はスペイン1部RCDエスパニョールが開校したジャパンアカデミーの責任者として本場のフットボールを伝えている。