「自分のサッカー」を持っていますか?「みんなはどう思う?」と選手に聞く前に指導者が持つべきメソッドと哲学

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主体性を持たせたコーチングは、サッカーにおいて重要です。ピッチの中でプレーする選手を第一に考える、プレイヤーズファーストの観点からみても、自ら考えて行動に移すことができるように、指導者は心がける必要があります。

トレーニングや試合のなかで、指導者が選手に問いかけることがあります。問いかけることで、選手は受け身の状態から、能動的な姿勢に変わるからです。

しかし、その問いかける指導を行う前に、指導者自身が「持っておけなければならないもの」があります。

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メソッドと哲学を持つことが指導のベースになることを認識しよう

世界のトップリーグで指揮を執る監督は、揺るぎない自信と魅力ある人格を兼ね揃えています。選手と同じく、監督もプロフェッショナルな立場。成績が思わしくなければ解雇になる厳しい世界のなかで、的確な指揮や堂々たる立ち振る舞いに、多くの人が尊敬の念をいだきます。

また、とくに海外の監督で特徴的なのが、インタビューの受け答えです。ある監督は理論的に答え、他の監督は哲学者のように語ります。彼らの口からでる魔法の言葉がすべて理解できなくても、一つひとつのフレーズに学ぶべきエッセンスが凝縮されているのを感じ取ることができます。

さらに彼らは、オリジナルのトレーニングメソッドを確立、または構築する力を持っています。そうでなければ、毎年変わる選手を短期間でチームにし、結果を残すことはできません。

オリジナルのメソッドと哲学を持たなければならないのは、なにもトップリーグの監督だけではありません。ジュニア世代を教える、街クラブの指導者にも同じことが当てはまります。

指導者とは字のごとく、向かうべき目的を指し示し、選手を導く人のことです。規模は違えど、メソッドと哲学がなければ、選手たちによい指導を行うことはできません。

海外のクラブであれば、よい指導ができない場合、解雇となります(下部組織の指導者も当てはまります)。そのため、海外の指導者はプロフェッショナルとして努力する環境にあるため、自ずと高い指導力をもつ指導者が生まれるサイクルとなっています。

日本の場合、部活の先生がチームの不振で解雇されることはありませんし、街クラブでもそう多くなないでしょう。体制に関してもJクラブの下部組織のように、育成部を設けて第三者の視点から現場の指導者を評価しているクラブも多くはありません。

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Photo:unsplash.com【@weigler】

 

指導者があらかじめ「答え」を持っていない状態で選手に質問すると、チームを路頭に迷わせる原因に

哲学には学問・論理・経験と意味が多岐にわたるので、ここでは「私のサッカーとは◯◯である」という理念を主題とします。

サッカーは個性の違う11人が行うスポーツのため、ゴールを決めるという目的は同じでも、そこに至るまでの考えは千差万別です。そのため、指導者はチームに自身のサッカー(戦術)を明確にする必要があります。

「いやいや、サッカーは自由にやるから面白い。他人のサッカー観をおしつけるのはよくない」、そう思う人もいるでしょう。そんなときは、サッカーを仕事として考えてみてください。あるプロジェクトで、リーダー(指導者)が部下たち(選手)にのっけから、「プロジェクトを成功させるためにはどうすればいい」と、伝えるとどうでしょうか。各々が好き勝手に仕事をはじめるか、まったく手付かずの状態になるでしょう。

指導者は自身が持っている知識と経験、さらにチームと相手の状況から、「どうすればチームがベストパフォーマンスを発揮することができるのか」を導き出す必要があります。指導者が出したプランに対して、選手から質問や疑問が出たとき、理論的かつ選手の気持ちをコントロールしながら腹落ちさせ、まとめることが腕の見せどころです。

つまり、指導者がプランをもたずに選手の考えをそのまま採用することは、「お好きにどうぞ」と指導を放棄しているのと変わりません。これはカテゴリーを問わず、すべての指導者に当てはまることです。

こう話すと「しかし哲学やメソッドといったって、そんな指導レベルに達していないし……」と、気後れしてしまう人もいるでしょう。しかし哲学やメソッドは、分厚い専門書を勉強しなければ構築できない、プロフェッショナルのチームで働いていなければ身につかない、というわけではありません。

指導者自身が「どんなサッカーが自分にとって楽しいか」を思い描くことから始まります。ある人はスピーディーで攻撃的なサッカーを、ある人は中盤で主導権を握りじわりと相手の守備を崩すサッカーを、楽しいと思うかもしれません。

それを思い描くことで、つぎに「では、どうすればそういったサッカーを再現できるのか」と考えが移ります。「どうすれば」の部分は、書籍を読んだり、映像をみたり、スタイルが似ているチームから学んだりと、さまざまな方法で実現に近づくことができます。

この段階までくれば、指導者として選手にどのようなサッカーをパフォーマンスしてほしいかを示すことができます。コーチング能力や経験がなくても、土台となる哲学に自身をもって指導を継続することで、より高いレベルにチームを導くことができるはずです。

チームのパフォーマンスをより高くするためには、指導者に哲学とメソッドが必要であることを、心がけておきましょう。

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