先日、「ドイツサッカーの育成文化をどう日本に落とし込むか」をテーマに、ドイツで指導者として活躍している中野吉之伴(なかのきちのすけ)氏と、トークイベントに登壇しました。
私は日本で活動している指導者として、「日本のフットボール現場で起きていることは何か」「環境を改善するためにフットボールをどれだけ知り、何を取り入れていけばよいか」「現場の我々は何を取り組めばよいのか」……。イベントは、そのような議論を深める場であると認識して語らせていただきました。
私がなぜ、このような場に立ったのかというと、指導現場に立つ多くの仲間と「知識・知見の共有」をすることが、子どもたちの環境改善につながると感じたからです。SNSでも、日々現場で感じたこと、問題点などを発信しているのは同じ理由からです。
当記事をリリースすることでも、さらに多くの方に子どもたちのための環境を考えていただくキッカケになっていただけたらと思います。イベントでは多くのヒントを見つけることができ、一度でお伝するのは難しいので、本テーマを連載という形でお届けいたします。
初回記事は「準備編」という形で、本題に入る前に私が経験した日本の指導現場の実態をお話しします。
未だに行われている「行き当たりばったり」のジュニア年代トレーニング
さて、皆さんのチームではキッズ年代、U-7、U-8、U-9の年代における特性とトレーニングのポイントは整理されていますか。また、クラブで統一された指導コンセプトは共有されていますか。残念ながら、そういった体系的な指導をされているクラブは、まだまだ多くないように思います。私が視察したクラブの中で、指導者が自身の経験を、そのまま子どもたちに押し付けている光景に遭遇することがあるからです。
現在、日本ではJFA(日本サッカー協会)の尽力により、ジュニア年代の現場に立つ指導者向けの知識共有や資格取得の場は増えていますが、いまだに多くのクラブの人に届いていない、というのが現実だと私は考えています。
実体験として、私は昨年からご縁があり、地域のボランティアクラブの現場をサポートしています。サポート当初、私がまず目にしたものは、U-8、7年代の練習で2時間30分というトレーニング時間(時間の長さにも驚きました)のなかで起こった「異常」でした。

トレーニングは指導者の笛に合わせて、規則正しく決められた動きをするウォーミングアップからスタート。トレーニング開始から時間が経過するごとに、私の不安な大きくなっていきました。なぜなら、ウォーミングアップに割かれた約1時間のなか、不適切な負荷・プレースペース・人数により、選手はボールに触れる機会が非常に少ない状況だったからです。さらに、思考を働かせる必要がない内容だったので、「選手は指導者に動かされていた」という印象を受けました。これでは選手たちがトレーニングに対して受動的になってしまいます。
フットボ―ルは、選手自身が自ら考えてプレーをすることで、ポジティブな姿勢でゲームやトレーニングに取り組むことができます。ウォーミングアップは身体的な準備とともに、「トレーニングモードに切り替えるための精神的スイッチ」の役割も果たしているのです。
メインセッションに関しても、オーガナイズではたくさんの「行列」ができます。壁パスからのフィニッシュトレーニングをイメージすると、状況がわかりやすいと思います。ここで、いくら指導者が長蛇の列に並んでいる選手に「集中して!」と伝えても、U-8、7年代は好奇心が旺盛な時期。注意力が散漫になってしまうのは至極当然なことです。
そして、最後のゲーム時間はほとんどなく、かつ大人数で行ったために「ボールに触れる」「プレーの関与する」といった現象を、各選手に満足のいく機会を与えることなく、ゲームの時間は終了してしまいました。
「これはフットボールなのか」。周りの人に心配をかけないように平常心を装いながらも、頭の中では途方に暮れている私がいました。しかし、クラブの関係者に話を聞くと、指導している人は、JFAの指導者資格を保有しているといいます。
指導の知識はあるが、トレーニングのテーマに一貫性がなく、シーズンをとおしたトレーニングの関連性がない。つまり、年代別に体系化された指導コンセプトを設定して、それをシーズンごとのテーマに整理、そして日々のトレーニングのメニューとして落とし込むことができていないのです。
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