数字や学年の変化と子どもの成長は比例しない。U10・11年代におけるドイツサッカー協会の取り組み

これまでのコラムではU8、U9年代を取り上げて、戦術をどのようにトレーニングに落とし込むべきかについて論じてきた。今回からはU10、U11年代における取り組みについてまとめていきたい。

ドイツのU10・11(小学校3、4年生)はEユースというカテゴリーとなり、この年代では7対7(GK+6人のフィールドプレーヤー、25分ハーフ。10チームによるホーム&アウェーによるリーグ戦)へと試合形式が変わる。その理由は何だろうか。 U10・11年代では以下のような性質・特徴が見られる点にまず注目していただきたい。

1.体を動かすことを楽しめる
2.競争への強い関心
3.上半身と下半身のバランスが取れてくるが、まだ全体的な筋力は弱い
4.テーマごとへの集中力は見られるが、まだ長時間持続できない
5.繊細さが顕著な場合が多い
6.大人の示す模範に無批判に従う

U8・9年代と比べると身体の成長とともにさまざまな動きをよりダイナミックにできるようになってくる。スピードやパワーがついてくるのに加え、競争に関して強い関心を持つ時期なので、それを生かして積極的なプレーを推奨することが大事だ。一対一での局面、シュートチャンス、スルーパスやワンツーパスなどの仕掛け。自分で判断して決断して、そこから得た経験を元にまたチャレンジしていくという環境が何より必要だ。

自分から主導的に仕掛ける積極的な姿勢を作り出す。これはただやみくもに仕掛けるということではなく、相手を抜くためにはどうした駆け引きが必要か、相手からボールを奪うためには何に気を付けなければならないのか、気をつけながらプレーするように導きたい。注意としては「ミスをしないため」の消極的なやり方はさらなる成長を妨げてしまうという点だ。

大人でも身に覚えがあるのではないだろうか。

「今日の晩ご飯は冷蔵庫の中にあるものでササッと作っておいてくれる?」

例えばあなたが奥さんや恋人にこんなことを言われて、すぐに作れるだろうか。もちろんできる人はできる。でも普段料理をしない人は、どこに包丁があるのかも知らないし、冷蔵庫の中にある食材すら把握していないかもしれない。そもそも料理に使用する野菜がわかっていても、何をどれだけ使えばいいかわからず、途方にくれる人もいるのではないか? 見よう見まねで何とか作ったものを食卓に並べたものの、口に運んだ途端に眉間にしわを寄せられたらどう思うだろうか? 「やったことないんだからしょうがないだろ!」  そんな言葉が飛び、喧嘩が始まるかもしれない。

だが、まさにそれと同じ思いを、子供が感じているときがないだろうか。

「なんでできないんだ!」
「だってわかんないんだもん!」

子供にはそうした反論が許されないことも多い。言い訳はするなと言われてしまう。そうなると、子供のやる気がなくなるのは当然ではないか。

これは他の年代でも重要な点だが、このU10・11年代では特に気をつけなければならない。積極性が出てくる一方で、大人の示す模範に無批判に従う傾向が強いからだ。せっかくチャレンジしたにもかかわらず、頭ごなしに怒られたり、否定されたりするとそのうちチャレンジしなくなる。そしてこの年代で積極的なアプローチを身につけ損なうと、その後取り戻すのが非常に困難になる。どれだけミスをしようとも、チャレンジしようとしている姿勢は絶対にサポートしなければならない。自主的な関わり合いを自分から身につけることは戦術理解の熟成にもつながる。

この年代でのプレー面ではどんなことに気をつければいいだろうか。DFB※タレント育成主任のマルクス・ヒルテが先月行われた国際コーチ会議の講演でこんなことを指摘していた。※ドイツサッカー連盟

「現在行われている7人制のサッカーを分析してみたんですね。どんなプレーが一番多いのか、どんなプレーを子どもたちは選択しているのか。U10・11年代だとパスの頻度が非常に多い。みなさんもそう感じていると思います。ドリブルやシュートと比べて圧倒的に多いんですね。これだけだと、ただのデータ比較にしかならない。ただ、とても気になる数字があるんです。それはパスの成功率が非常に低いことなんです」

基本的にドイツでは他のヨーロッパ諸国同様、小さいころから自分たちでボールを回してゲームをコントロールして、意図的に攻撃を組み立てることへ普通に取り組んでいく。だが実際に試合データを調べてみると、パス成功率が50%を下回ることも少なかったという。なぜだろうか。それは自分で意図して、狙って出したパスではないことが多いからだ。

「とられるな。すぐにパスで回せ」と指導者に言われれば、子供たちは早くプレーすることばかりに気がいってしまう。結果、「なぜ、どうして、どこへパスをするべきか」の判断なしでプレーしてしまう。

人間は行動するときに「認知→判断→決断→実践」というプロセスを踏む。だが認知、判断、決断を自分でしている子供が圧倒的に少ない。ピッチの現象を認知し、そこからプレー選択肢を判断し、何をすべきか決断しているのは、ピッチ外から叫び続ける指導者や保護者だからだ。だからいつまでも認知力、判断力、決断力が身につかず、成功率の低いプレーに終始してしまう。当然のようにプレー成功率という数値で見てみると、ドリブルやシュートでも似たような傾向がみられる。だからこそこの年代でもしっかりと子供たちが認知、判断、決断できるような練習、試合環境を整えることが重要なのだ。

ドイツサッカー協会ではこの年代において取り組むべき内容について以下のようにまとめている。

・戦術=どのように判断するのか
この年代での実践:個人戦術の基礎を学び、初歩的なグループ戦術に触れ合う

・インテリジェンス=どのように決断するのか
この年代での実践:駆け引きの中でプレーすることを要求する

・技術=どのようにプレーするのか
この年代での実践:スピードよりも正確さを大切に

7人制となることで中盤という概念が生まれてくる。ゴールを奪う、ゴールを守るためにはゴール前に運ぶ、ゴール前まで運ばせない、という考え方が必要になってくるからだ。試合に対する判断基準を整理させながら、U10では1対1における基本的な個人戦術から初歩的なグループ戦術に触れ合うところまで、そしてU11では1対1における個人戦術をより状況に応じて使い分けられるようになり、グループ戦術にも少しずつ積極的にチャレンジできるところまでいけるのが望ましい。

この年代から少しずつグループ戦術という考え方を理解して、試合で実践するためにはボールがないところでの自分の役割、課題を理解することが大切になってくる。いわゆる「オフザボールの動き」というものだ。自分一人でプレーするのではなく、選手同士のつながり合いの中でプレーがある。それがサッカーにおいて何よりも大切な基本なのだから。

小さい時からサッカーを始めて、U8、U9の5人制サッカーで基本的なことを経験してきた子供たちなら、こうしたアプローチをすることは十分にできる。ただ、この年代からサッカーを始める子ども多いだろう。そうした時は無理をせずに、それこそU8やU9で取り組むようなシンプルで楽しいトレーニングから始めれば全く問題ない。慣れてきたら移行すればいいし、やってみてまだ難しそうならまた戻ってみてもいい。子どもたちの成長には個人差がある。また、記憶に定着するまでは時間がかかる。昨日の練習で理解してうまくできていたことでも、次の練習ですっかり忘れてしまっていることがある。それを自然と捉えることだ。大人のものさしで子供の成長を測ったり、強要したりするのは絶対にいけないことなのだ。

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中野吉之伴

中野吉之伴(なかの・きちのすけ)/41歳。ドイツサッカー協会公認A級ライセンス保持(UEFA-Aレベル)。01年渡独後地域に密着した様々な町クラブでU8からU19チームで監督を歴任。SCフライブルクU15チームで研修 を積み、現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督と、息子がプレーするSVホッホドルフでU9コーチを務めている。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。ナツメ社より出版の「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」は18年サッカー本大賞優秀賞に選出。WEBマガジン「中野吉之伴『子どもと育つ』」