昨年大きな驚きを提供してくれた久保建英選手を筆頭に、多くの日本人選手が海外でプレーしています。1970年代にドイツの1.FCケルンに在籍した奥寺康彦氏から始まり、三浦知良選手のセリエAジェノアへの移籍を足掛かりに多くの日本人選手が海を渡りました。
数年前まではドイツに最も多くの日本人選手が在籍していましたが、2019年からはベルギーが最多です。2020年にベルギー代表チームは、F I F Aランキングで世界1位に輝くほどの強豪国ですが、国内リーグに関してはスペインやイングランドほどの知名度はありません。
そこで今回は、知られざるジュピラー・プロ・リーグ(以後、ベルギーリーグ)の魅力とともに日本人選手が増えた背景を探ります。
ベルギーリーグの概要
2020年ベルギーリーグのUEFAランキングは8位です。1部リーグには16チームが所属しており、年間30試合が行われた後に、上位6チームが10試合のプレーオフを行って優勝チームを決定します。
優勝チームにはCL3次予選の出場権が与えられます。歴代最多優勝クラブはアンデルレヒトです。
国籍も年齢も関係なし! 若手選手がステップアップを目指してしのぎを削る
ベルギーリーグに日本人が増えた背景には平均年齢の低さと外国人比率の高さがあります。
下のグラフを見ると、ベルギーはオランダ・オーストリアに次いで平均年齢が低く、2番目に外国人比率が高いことが分かります。

(図:堂安律も若手気分でいられない?欧州リーグの平均年齢と外国人比率より編集部作成)
また、ベルギーリーグには外国人枠・EU外選手枠といった国籍による登録・出場規制がないため、世界各国から若手選手が結集しているのです。
>>大躍進ベルギー代表の根幹を築いたアンデルレヒトの育成とは
DMMによるシント=トロイデンVV買収
2017年に日本企業のDMMMがシント=トロイデンVV(以後、シントトロイデン)の経営権を取得しました。
クラブの買収に伴い会長に就任したD M M取締役の村中悠介氏によりますと、上述した外国人枠がないことに加えて、降格が1チームのみだという点も挙げています。ベルギーリーグは16チームで構成されていますので、降格する確率は6%です。一方Jリーグは最大3チームが降格しますので、確率はベルギーリーグの3倍以上16%です。
買収以後のシントトロイデンには、冨安健洋選手や遠藤航選手が短期間ながら在籍し、それぞれボローニャとシュトゥットガルトへ移籍しました。現在は鈴木優磨選手を筆頭にベルギーリーグ最多の4人が在籍しています。
2020年から動画配信サイトDaznにて、日本人選手在籍チームの試合が放映されることになりました。日本人選手の活躍とともに、ダイヤの原石を探すのも楽しみですね。
ベルギーから羽ばたいた有名選手
将来有望な若手選手が多く在籍するベルギーリーグですが、2020年ヘントのジョナサン・デイヴィッド選手がフランス・リールにリーグ史上最高額の2700万ユーロで移籍しました。過去には誰が、どのくらいの金額で、ベルギーリーグから移籍したのか移籍情報サイト『Transfermarkt』で調べてみました。

(図)ベルギーリーグからの移籍時期と移籍金 Transfermarktより編集部作成
レアル・マドリードに所属するアザール選手はフランスリーグでプロキャリアを開始しましたので、上のグラフには含まれません。世界のトッププレイヤーも若くして高い評価を得ていたことが分かります。ベルギーでは今も20代前半の選手が多く在籍し、隣国オランダやドイツ、フランスへ移籍していく活気のあるリーグなのです。
>>大躍進ベルギー代表の根幹を築いたアンデルレヒトの育成とは
プロデビューはベルギーで! 前例はC大阪のあの選手……
最近では20代前半の日本人選手も海外に挑戦することが多くなりましたが、前述した外国人枠に加えてEU枠規制にも該当してしまい、突出した選手でなければ出場機会を得ることも難しいのが現状です。しかしベルギーリーグでは、外国人枠もEU枠もありません。実績のない若手選手も実力次第で戦える環境なのです。
実は「プロデビューはベルギーリーグから」、という日本人選手がいます。C大阪に所属する小池裕太選手(23歳)です。
小池裕太選手は流通経済大学時代にユニバーシアード日本代表にも選出。2018年に大学4年生ながらシントトロイデンに加入しプロデビューを飾りました。海外のトップリーグを目標にプレーをしている若き選手にとって、「Jリーグから」の一択ではなく、「ベルギーから」ステップアップするルートも考えられます。小池裕太選手のようにできるだけ早く世界のリーグで挑戦したいと考えているのなら、ベルギーリーグは大きな魅力となるのではないでしょうか。
>>大躍進ベルギー代表の根幹を築いたアンデルレヒトの育成とは
参照
NumberWeb(『堂安律も若手気分でいられない?欧州リーグの平均年齢と外国人比率』)
footballista(『DMMは、なぜシントトロイデンを買収した? 同社取締役が語る真意』)
Jリーグ(『25周年ということで、Jリーグについて語ります』)
コメントを残す