【中野吉之伴コラム】団子サッカーの全てが悪か? 団子のメリットを活かす練習

前回はU8における守備のとらえ方とトレーニングのポイントについて、子どもたちが本来持っている積極性にブレーキをかけさせることなく、ボール奪取にチャレンジしながら、取りに行けるタイミング、局面を少しずつ整理させることが大切だとまとめてみた。今回はU9年代について取り上げてみよう。

攻撃の話をしたときに、団子サッカーの是非について考察した。

「どうすれば周りの様子に気を配るようになれるのかを考えることが大切だ。子どもたちが無理なくピッチ全体を見渡せるサイズで、お互いのことを認知し合えるだけの人数で行えているかという点で試合環境を考慮することが必要ではないか」

大人になった時でも「極端なまでの団子状態」をかいくぐっていくプレーをすることはないし、そうすることで生じるデメリットがわかっているのであれば、年代に応じた試合・トレーニング環境で正しいサッカー感を少しずつ身につけていくことが求められるという点を強調してきた。

と、ここまでは団子サッカーのままではよくないということを強調してきたが、実際に団子状態のすべてが悪いことなのだろうか? それもまた極端すぎる考え方だと思う。というのも局所的にボールの近くに複数の味方が固まって次々にボールを奪いにいければ、相手選手は相当いやだ。リヴァプールやライプツィヒのような矢継ぎ早にプレスにいくスタイルとの類似性だってそこにはある。

だとすれば、この団子状態のメリットを生かさない手はない。要は解釈次第であり、取り組み方次第だ。気をつけなければならないのは、ボールに多くの選手が固まりすぎるとパス一本や足の速い子のドリブルで一気に突破されたりするという点。だから「ちょうどいい団子状態」を作るためにも、少しずつ周囲の様子を認知して理解して判断できるようになるために、日々のトレーニングから取り組んでいくことが大切だろう。

U9年代にもなれば、サッカーを始めて数年という選手も多くなってくる。そうした選手はピッチを見渡し、試合の状況を認知し、やるべきプレーとやってはならないプレーの線引きも、だいぶ頭では理解できるようになってきているはずだ。ボールを奪われた瞬間にみんなで守備へのスイッチをしっかりと入れる。お互いの距離を狭めながら、自分たちが守りやすい最適なポジションにつく。頭で少しずつわかってきたことを実践でもちゃんとプレーで再現できるようになるためにも、やはりトレーニングから攻守の切り替えがあるものを多く取り入れることで、それぞれの動きが断片的にならないようにしたい。

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中野吉之伴(なかの・きちのすけ)/41歳。ドイツサッカー協会公認A級ライセンス保持(UEFA-Aレベル)。01年渡独後地域に密着した様々な町クラブでU8からU19チームで監督を歴任。SCフライブルクU15チームで研修 を積み、現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督と、息子がプレーするSVホッホドルフでU9コーチを務めている。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。ナツメ社より出版の「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」は18年サッカー本大賞優秀賞に選出。WEBマガジン「中野吉之伴『子どもと育つ』」