まずはボールを蹴る喜びを。地域クラブが悩む子どもの「選手化」

「サッカーが面白い」と感じることがスタートライン、まずはボールを蹴る喜びを

小学校低学年の子どもを担当する指導者の中には、「子どもたちのサッカーレベルに差がありすぎて、どう教えればいいかわからない」と、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
特にレベルの違いといっても、技術の部分ではなく、子どもの動機や目的といったメンタルに比重があることが多いようです。

技術や戦術の前に、子どもはサッカーをやりたくてグラウンドに来ている段階ではない

セレクションを行い、クラブが求める基準を満たした子どもだけに指導するならば、この問題はあまり起こらないでしょう。そもそもサッカーが好きで、上手くなりたいという動機を持っている時点で、その子どもは立派な選手といえるからです。

地域に根ざした、いわゆる「サッカー少年団」の場合はセレクションを設けず、つねに門戸を開放しているところが大部分です。サッカーをやりたくて入団した子どももいますが、子どもによっては「兄がやっているから」「何か運動をさせたくて」など、子どもより保護者の意向で入る場合も少なくありません。また、少子化の影響でクラブとしても、一人でも多くの子どもに入団してほしいのも事実といえるでしょう。

しかしそれが、現場に立つ指導者の顔に苦悩の色をにじませます。

「この子は基礎ができてサッカーが好き。でもあの子はまだサッカー自体に興味を持っていない。どうやって一緒にトレーニングさせようか……」
なかなか途方にくれる難題です。最近はサッカーを扱うメディア、特にインターネットサイトでは、こうした現場レベルで起こる問題に寄り添う記事が出始めています。

しかし、各クラブによってそうした状況になった経緯が異なるので、外部の情報がそのまま適応できるかといえば、当てはまらないことも多く難しいのが現状でしょう。
そこで、子どもが動機を持ってサッカーを行う「選手」になるまでのアプローチ例をご紹介します。

boy holding a ball
Photo:unsplash.com【@lukas_rychvalsky】

◆関連記事◆
【Uー8】団子サッカーで技術が上がる!?狭いスペースでのテクニックが身に付く

「サッカーが面白い」がスタートライン。サッカーが持つ特異性を何度も体験させる

サッカー自体に興味を持っていない子どもに一番やってはいけないのが「教えること」です。
理由は、動機がない人に対して「教える」という行為は、その人にとって苦痛となりえるからです。

たとえば幼児がボール遊びをしているときに、大人がボールの蹴り方を教えようとしても嫌がる場面が想像できるでしょう。幼児にとって「教わる」なんて気持ちがないからです。それは小学生にも、同じことが当てはまるでしょう。

では、どうすればよいのでしょうか。
それはサッカーの持つ特異性を「魅せる」「発見させる」ことが重要と言えます。

「魅せる」とは、周りの人がサッカーをするだけでいいのです。魅せている人が、楽しく真剣にプレーをするだけで、サッカーの面白さは子どもに伝わるでしょう。それを一度・一日の単位ではなく、何度も目の当たりにする機会を与えればいいのです。そのうち「サッカーが面白い」と感じて、一人でボールを蹴り出したら大きな一歩となります。ボールを蹴る喜びを感じる時は近づいています。

「発見させる」とは、その子が行ったプレーを指導者が解説してあげることです。
わかりやすいのはボールでしょう。キックをすれば転がったり、浮かんだり、カーブしたりするし、コントロールすれば足元に止まったり、反発して違う方向に転がったりと、無数の動きをします。球技の面白さはボールの扱いが難しいことで、それをなんとか人の技術でコントロールできるようにしようとする過程に面白さが生まれます。対面パスなどの反復練習に辟易としてしまう子どもは、こういった発見する面白さに気づいていないのが原因といえるでしょう。

「魅せる」「発見させる」ことを子どもに体験させることで、子どものなかで何かが変化します。「強くボールを蹴りたい」「たくさんボールを触りたい」「みんなと一緒にサッカーしたい」など、動機の“芽”が見えてきたらしめたものです。その子はすでに選手としてスタートラインに立っている状態といえます。

◆関連記事◆
小学生でも簡単に取り組める!マウンテンクライマーでサッカーのプレーの質を向上させよう!

子どもの意識を理解したうえで通わせる。保護者の立場から考えるサッカースクールの存在

チーム(少年団)とは異なり、トレーニングに特化した形態のスクールがあります。通っている子どもは、「チームの練習と併用」「チームには所属せずスクールのみ」など理由はさまざまです。子どもの「需要」と、スクールの「供給」が成立していれば、スクールは心強い存在となります。
ただし、こちらも動機なく、ただ通っているだけだと、子どもにとって苦痛となってしまいます。
スクールはその運営スタイルから、「教える」ことを売りとしています。保護者としても「〇〇の能力が向上できるから、通わせている」という理由が根底にあって、我が子を通わせていることが多いでしょう。
スクールの場合、提供するサービス(技術)を参加しているすべての子どもに教える義務があるので、チームのように、サッカーがしたい動機づけをしている余裕はほとんどありません。ここではサッカーの普及ではなく、技術などの向上を目的に運営しているスクールを指しています

たまに「うちの子、やる気が無いようでしたらビシッと言ってください」という保護者がいるようですが、何かの理由でもともと動機がある子のやる気が下がっている場合は別として、先に述べたようにスクールの指導者にそれをお願いするのは、無理なお願いではないでしょうか。

トレーニングに特化したスクールに子どもを通わせる場合、「サッカーが好きで上手くなりたい」という意識を子どもが持っているかどうかを保護者が理解することが重要といえます。

◆関連記事◆
【Uー8】団子サッカーで技術が上がる!?狭いスペースでのテクニックが身に付く
小学生でも簡単に取り組める!マウンテンクライマーでサッカーのプレーの質を向上させよう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です