指導の質か入団のしやすさか――。グラスルーツの発展にさまざまなクラブがあることは悪いことではない

グラスルーツの充実と拡大は、日本サッカーの底上げになくてはならない存在だ。運営、指導、保護者との連携など、良くしようと励んでいる指導者も多くいる。※グラスルーツだけだと広義なので、ここではJFAにチーム登録して公式戦に参加しているチームを指すこととする。ただし、指導者を本業にしているか否かは問わない。

そしてこのグラスルーツにおいて避けて通れない話題が「月謝」だ。

月謝の額と指導の質でクラブを別ける必要はあるのか?

「お前はサッカーで商売したいの?」。これはサカレコ編集部がある指導者と話していたときに言われたフレーズだ。その瞬間だけ、表情は少し不機嫌に見えた。その指導者は、選手からは最低限、運営で必要なお金だけを月謝としてもらい、サッカークラブを運営している。同じクラブにいる他の指導者も、平日は自分の仕事をしながら休日にボランティでグラウンドに立つ。いわゆる街のサッカー少年団だ。

経験者問わず、広く門戸を開放しているサッカークラブの特徴として、①選手がかかる費用は登録費や保険など必要最低限②指導者はパパ・ママコーチ、というのが一般的だ。こうしたクラブでは、指導の質云々の前に、グラウンドに来た選手が楽しくサッカーをすることを主な目的としている。

一方、こうしたクラブとは逆の立場として捉えられているのが、選手からある程度の月謝をもらい指導しているクラブ。指導者もクラブ運営を商いとしていることが多い。

指導者はプロフェッショナルとして意識していることが多く、ハード・ソフト面の投資も積極的に行う傾向にある。「良い指導をするので、それに見合った月謝を頂いています」という考えだ。

この二種類のクラブだが、なぜか「どっちがいい」という議論になりやすい。人によっては喧嘩になるかと思われるような剣幕で「ジャッジ」をするのだ。

しかし考えてほしい。そもそもどちらのクラブも誰のためにかといえば、選手に他ならない。誰でも入りやすくリーズナブルな月謝のクラブと、高いレベルを目指すために指導の質を高めたクラブの共存はあって当たり前なのだ。

よく「巷のパパコーチはもっと指導の勉強をしないと駄目!」と、警鐘レベルの勢いで捲し立てる人がいるが、まったくのお門違いだ。サッカーができる環境を維持するパワーは、外からみている人ではわからないほど必要だ。平日仕事をして時間がない人が、土日でも選手のために時間を割いて指導に当たることを当たり前と思ってはいけない(もちろん、サッカーを教えていないあるまじき指導をしている場合は別だが)。

また、指導に人生をかけて自分に投資し、その時にできる最高の指導をしようとする指導者もいなくてはならない。日本に限らず、サッカーの指導者で生活するのは簡単なことではない。毎年、選手の在籍数は変わり、自身の指導理念と試合結果の板挟みを一生感じながらやっていく重圧は、なかなかのものだ。雨風を受けながら数時間グラウンドに立ち続けることもあるこの職業に、何歳までできるだろうという不安もある。

そんな、一人でも多くの子どもにサッカーをとおして、かけがいのない経験をしてほしいと思って指導している指導者が、それに見合った対価を設定するのは、何もおかしなことでもやましいことでもない。

とどのつまり、この二つのクラブは「どっちが必要」ではなく、「どちらも必要」なのだ。であれば、二つはお互いに協力することで、より選手が求めている環境の拡大と充実をなし得るはずだ。選手の情報共有だってできるし、指導や運営で至らない部分をサポートし合うことができるかもしれない。

日本のグラスルーツをより豊かにするには、さまざまなクラブがお互いをリスペクトすることが必要ではないだろうか。

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