指導の質か入団のしやすさか、多様なクラブがあっていい

グラスルーツの発展のために、多様なクラブがあっていい

グラスルーツの充実と拡大は、日本サッカーの底上げになくてはならない存在といえます。
運営、指導、保護者との連携など、日々クラブやチームを良くしようと励んでいる指導者も多くいます。
※グラスルーツだけだと広義なので、ここではJFAにチーム登録して公式戦に参加しているチームを指すこととします。ただし、指導者を本業にしているか否かは問いません。

趣旨の異なるサッカークラブが存在する

街のサッカー少年団

ある指導者は、選手から最低限のクラブ運営に必要なお金だけを月謝としてもらい、サッカークラブを運営しています。同じクラブにいる他の指導者も、平日は自分の仕事をしながら休日にボランティでグラウンドに立つ、いわゆる「街のサッカー少年団」です。

経験者かどうか問わず、広く門戸を開放しているサッカークラブの特徴として
①選手にかかる費用は登録費や保険など必要最低限
②指導者はパパ・ママコーチ
というのが一般的です。
こうしたクラブでは、指導の質の前に、グラウンドに来た選手が楽しくサッカーをすることを主な目的としています。

レベル向上を目指すサッカークラブ

一方、こうしたクラブとは逆の立場として捉えられているのが、選手からある程度の月謝をもらい指導しているクラブです。指導者もクラブ運営を商いとしています。

指導者は元・サッカー選手などで、プロフェッショナルとして意識していることが多く、ハード・ソフト面の投資も積極的に行う傾向にあります。
「良い指導をするので、それに見合った月謝を頂いています」という考えです。

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Photo:unsplash.com【@acrehuet98】

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趣旨の異なるクラブをわけて考える必要はあるか?

この二種類のクラブについて、なぜか「どっちがいい」という議論がよく起こります。人によっては喧嘩になるかと思われるような剣幕で「ジャッジ」をするのです。

しかし考えてほしいのは、そもそもどちらのクラブも誰のためにあるのかといえば、選手に他ならないでしょう。
誰でも入りやすくリーズナブルな月謝のクラブと、高いレベルを目指すために指導の質を高めたクラブの共存はあって当たり前といえます。

パパコーチの負担

よく「巷のパパコーチはもっと指導の勉強をしないと駄目!」と、警鐘を鳴らして捲し立てる人もいますが、果たしてそうでしょうか。

選手たちがサッカーができる環境を維持するための労力は、外からみている人では想像もつかないほどの大きな負担となります。
平日仕事をしていて時間のないパパコーチが、土日でも選手のために時間を割いて指導に当たることを当たり前と思ってはいけません。選手が楽しくサッカーができるよう、大きな負担に耐えながら、全力でサポートしているのです。(もちろん、サッカーになっていない、あるまじき指導をしている場合は、話が別ですが)

経験を売り物としているプロフェッショナル

また、自身の経験を売り物として、プロフェッショナルを意識して指導に人生をかけ、その時にできる最高の指導をしようとする指導者もいなくてはなりません
日本に限った話ではなく、サッカーの指導者として生活していくことは簡単なことではないのです。
毎年、選手の在籍数は変わり、自身の指導理念と試合結果の板挟みを感じながらやっていく重圧は、なかなかのものでしょう。
雨風を受けながら数時間グラウンドに立ち続けることもあるコーチの職業に、何歳までできるだろうという不安もつきまといます。

そんな「一人でも多くの子どもにサッカーを通して、かけがいのない経験をしてほしい」と思って指導している指導者が、それに見合った対価を設定するのは、おかしなことでもやましいことでもないでしょう。

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お互いをリスペクトする事が大切

つまり、この二つのクラブは「どっちが必要」ではなく、「どちらも必要」なのです。
「楽しくサッカーに親しむ」ことを目的としたクラブと、「上を目指して技術を向上する」ことを目的としたクラブでは、全く趣旨が異なります。
であれば、二つはお互いに協力することで、より選手が求めている環境の拡大と充実をなし得ることができるのではないでしょうか。
選手の情報共有が可能になりますし、指導や運営で至らない部分を互いにサポートし合うことができるかもしれないのです。

日本のグラスルーツをより豊かにし、日本サッカーの底上げをするには、さまざまなクラブがお互いをリスペクトすることが大切なのではないでしょうか。
互いをリスペクトし、サポートしあう大人の姿勢が、選手たちにも「相手をリスペクトし、サポートしあう」というチームスポーツにおいて大切なマインドを育むことにも繋がるといえます。

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