近年、世界のビッグクラブに入団する若手選手が、多く輩出されています。
日本でも、久保建英選手がビジャレアル(ローン)に、安部裕葵選手がバルセロナBに移籍するなど話題になりました。
入団したすべての選手が活躍できるほど、トップチームは甘くはありませんが、クラブの目に止まったのには、それなりの理由があるはずです。
その理由のひとつに、「サッカーを理解してプレーをしているか」が挙げられるでしょう。そして、選手にサッカーを理解させるには、チームや指導者が「分析」を行っているかが重要な点となります。
サッカー分析を行うことで、選手もうまくなるための“納得”を手に入れる
分析と一言にいっても、その種類や方法は様々です。2016年に降格の危機に立たされていたホッフェンハイム(独)は、29歳の指導者を大抜擢し、見事、危機を脱出しました。そのときに活用されたのが、同チームをサポートしていた「SAP社」のテクノロジーです。
同社は2006年からドイツ代表もサポートしています。ビッグデータ分析ツール『SAP Match Insights』は、高精度カメラで選手の動きをトラッキングし、さまざまなデータ取得を行っています。
このような「データ分析」は、客観的に選手のプレーを数値化し、チームのSWOT分析に活用さます。
(※SWOT分析とは、目標を達成するために意思決定を必要としている組織や個人のプロジェクトなどにおいて、外部環境や内部環境を、強み 、弱み 、機会 、脅威 の4つのカテゴリーで要因分析し、事業環境変化に対応した経営資源の最適活用を図る経営戦略策定方法の一つである。) ウィキペディア
こういった分析には、多額の設備投資が必要であるため、欧州リーグでもほんの一握りのクラブしか採用していません。その他のクラブは「分析官」を置き、人によって分析されます。
分析官を下部組織から置いているクラブは多く、取得したデータは、移籍の際のエビデンスデータ(根拠となるデータ)としても取扱されることがあります。選手の出場記録などの基本的なデータから、プレーの特徴やその変化など、事細かく記録されます。
チームの監督にデータが共有されることで、チームをどのように向上させて行けばよいかという判断材料となります。つまり、「今日の試合は良かった」で終わらせることは、監督が仕事をしていないのと一緒となのです。
チーム分析をするということは、選手のプレーも「丸裸」にされる訳ですので、選手自身も強みや弱みが明白になります。最終的には選手が自分で納得してプレーをすることで、パフォーマンスが向上するのですが、その納得するための「材料」をチームが用意しているか、というところが重要です。ここに欧州の選手が若くして檜舞台に立てる理由があります。
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監督やスタッフにはサッカーを分析する義務がある
サッカーの分析は、現代において必須と言える時代になっています。
サッカーが集団スポーツであることを前提として、より認知と判断をはやく正確に行えるかが問われている現代サッカーで、「みんな、よく頑張った」の一言で終わる指導者が、選手の未来に何を残せるでしょうか。
専門のスタッフがいなくても、サッカーの分析をすることは可能です。サッカーがどのように構成されたスポーツで、どういった性質を持っているのかを理解していれば、クラブやチームのフィロソフィーに沿った分析ができるはずです。
「サッカーはチームスポーツ。チームとして機能するにはまだ時間がかかるし、それを踏まえて発展していかなければならない」。こう言葉を残したのは、先日、現役を引退したフェルナンド・トーレス氏。日本人の技術を認めつつも、サッカーを理解している選手は、まだまだ少ないと金言を残してくれました。
「見る」から「観る」へ。これからは「サッカーを分析する」ことが日本でも一般的になる必要があるのではないでしょうか。
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